こんにちは。サーバーサイドエンジニアの薮です。
2019年に新卒入社し、現在は新規タイトルの開発に携わっています。
今年2月に社内で出社/在宅環境を交えたエンジニアのリモート読書会を立ち上げ、ある程度形が出来上がってきたため、立ち上げた背景、工夫した点、また読書会を通じて得られた成果などをご紹介したいと思います。
対象読者
- 輪読会、読書会、エンジニアのコミュニティ活動に興味ある方
- リモート環境下におけるエンジニア同士のコミュニケーション、議論の活性化に興味ある方
- コロプラの技術文化、活動に興味ある方
背景
年始の上長との1on1で読書会を立ち上げたい旨を相談してみたところ、無事許可を頂き、サポートを頂きつつ立ち上げに向けて動き出しました。
読書会を立ち上げた動機は大きく3つあります。
部署の垣根を超えた横の繋がりを広げたい
私が入社した2019年のコロプラでは、定期的に読書会を開催する文化がありました。本から得られた知識はもちろんですが、読書会を通して部署外の先輩方と繋がりができ、たくさんの刺激をもらうことができました。
しかしその後コロナ禍に入って在宅勤務が導入されたことで、継続が難しくなり読書会は自然消滅してしまいました。在宅勤務を経験して感じたのですが、どうしても所属部署外の人と話すきっかけがなくなってしまい、周りから刺激を受ける機会も減ってしまいました。
そこで、在宅環境下でも定期的に部署外の人と話す機会の一つとして、リモート読書会を立ち上げてみるのが良さそうだと思いました。
技術への興味、気づき、議論へのきっかけを作りたい
テストや設計などの話をしていた時によく出てくる難しさの理由の一つに、チームで開発を行っているため一個人だけでは導入やその後の維持が難しいという声があります。
チーム開発では個人の設計やコーディング力だけではなく、周りに自分の考えや論拠を言語化して伝え、巻き込んでいく力も必要です。そういう力や経験を養うには、所属先の業務状況にもよってくるため、なかなか壁打ちする機会がない場合があります。また疑問点の解消や発想の広がり、知見の共有なども難しく、独学にも限界があります。
そういった言語化の壁打ちをしたり、疑問をぶつけたり、お互いの知見を共有する場として読書会が役立てば良いなと思いました。
ファシリテーター経験を積みたい
私が目指すエンジニア像の一つに「周りに良い影響を与えられるエンジニア」があります。
ファシリテーターは中立の立場で、参加者の自発的な発言や議論を促し、参加者の意見のまとめ役を行います。今までファシリテートする経験がほとんどなかったのですが、私のエンジニア像としてピッタリだなと思い挑戦してみることにしました。
読書会の進め方
開催頻度は週1時間枠で、下記の流れによって行っています。
- ビデオ会議に参加する
- 区切りの良い箇所 (章など) まで読む
- 参加者のメモを元に、皆で話して理解を深める
- 読書会の録画を社内向けにアーカイブとして公開する
現在取り扱っている本は「Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計」(著: Robert C.Martin)*1で、時間配分的には読むのが1章辺り15分ほど、話すのが大体10分〜20分くらいで進めています。そのため週1時間枠で1〜2章ずつ読み進めています。
1. ビデオ会議に参加する
読書会の時間になったら各々が Google Meet *2 のビデオ会議に参加します。
2. 区切りの良い箇所 (章など) まで読む
読書会の形式として、事前に宿題として読んで来る形式と、読書会中に読む形式があると思います。事前に読む形式の方が議論の時間が長く取れ質も高くなると予想されますが、なるべく全員の継続的な参加を重視したかったため、読書会中に読む形式を採用しました。
「Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計」の場合は、1章辺り15分ほどで読めるので、章で区切るのが時間配分的にちょうど良かったです。
読む際は、読んでいて気になった点や疑問点などを、参加者共通の Google Jamboard *3にメモしてもらうようにしています。これは元々各自の理解メモを残す意図で始めてみたのですが、皆で話す際にメモを元に共通認識を持ったり、議論を広げるきっかけになり、かなり便利でした。
3. 参加者のメモを元に、皆で話して理解を深める
Jamboard に書いた参加者のメモを元に、ファシリテーターが意見や疑問を拾っていき理解を深めていきます。
メモ作成者ごとに色を分けてもらったり名前を記載しているため (脚注: ブログ掲載の都合上、名前は伏せてあります) 、ファシリテーターはメモ作成者に振りつつ、意見がある人が発言する形で進めています。
話す時間は大体10分〜20分ですが、特に時間制限は設けず意見や疑問が落ち着くまで話します。
4. 読書会の録画を社内向けにアーカイブとして公開する
議論中の録画を繋げた動画をアーカイブとして社内向けに公開しています。
アーカイブの公開には大きく3つの目的があります。
欠席者に対する救済
活動は時間と曜日を固定してなるべく継続参加しやすいようにしていますが、優先度の高い業務や休暇などで欠席した場合でも追いつけるよう、アーカイブを残しています。欠席が続いてしまうと、追いつくのが大変になり再参加のハードルが上がってしまうという配慮です。
参加者外の興味ある方への学びの共有、きっかけ作り
話す都合上で参加者の人数制限をしているため、興味ありつつも時間の都合や自分の意見を言うにはまだハードルが高いと感じる方などにも隙間時間で見てもらい、少しでも学びの共有やきっかけになればと公開しています。
参加者の振り返り
これは初めは意図していなかったのですが、参加者が録画を見ることで自身の話し方や意見を客観的に振り返ることに役立ちました。
開催してみて
一人ではできない読書会ならではの気づき、共有
参加者が運用/新作/サーバー基盤など多様なバックグラウンドを持っていることで、同じ文章を読んでいても多角的な視点での意見や感想、知見の共有が多く出ました。Jamboard のメモを見て頂くと、色ごとに着眼ポイントが異なるのでなんとなく伝わると思います。
一人では何気なく飛ばしてしまったワードでも、誰かが違和感や疑問を持つとそこから話の展開が広がっていく場面があり、読書会ならではと思う場面が多々ありました。
横の繋がりの形成、社内での波及
参加者同士の繋がりはもちろんですが、徐々に社内での認知度が高まり、Slack 投稿を見て参考事例を共有してくださる方や、録画のアーカイブを見てくださる方が増えてきました。
オンラインホワイトボードがかなり便利
オンラインで読書会を行うにあたっての大きな懸念は、表情が読めない事によりお互いが顔色を伺ってしまい、読書会のテンポが悪くなることでした。
Jamboard のメモを全員が見られることにより、参加者はお互いの共通認識が作りやすく、ファシリテーターは時間配分を考えつつ効率的に意見を拾って行けたため、出社/在宅環境を交えていても、かなり円滑な進行ができました。
これがメモなしで挙手制だったりファシリテーターが話者を振る形式だったりすると、かなりテンポが悪くなっていたと思います。
参加者の感想
- 普段関わりのない人も含めて、いろんな立場の人の考えが知れました
- 新作・運用・基盤など多種多様なメンバーが参加していることで、とてもバランスの取れた議論ができていると感じました
- 設計周りで、実情をベースにした議論をする機会があるのはとても参考になります
- 新鮮な知識なので議論が楽しく、些細な疑問点も生まれやすいと感じます(映画を観たあとに感想を共有する感覚に近いです)
- 自分の考えを壁打ちできる機会が持てました
- リモート下でアーキテクト的な話をする場が社内に乏しくなってしまっていたので、そのような視点の話ができて非常にモチベーションが上がりました
- 勉強のモチベーションが出るので、興味はあっても自分で勉強するにはモチベーションを維持できない分野を学習するには良い機会だと感じました
- 事前に読んでくる形式だと20~30分の時間を事前に取る必要がありますが、週1でその時間を取るのは意外と難しいように感じるため、読書会でその時間を取れるのは気が楽でした
- アーカイブのおかげで、参加できない場合でも隙間時間で追いつくことができて便利でした
- 動画で自分の振る舞いを客観的に振り返られるのが結構貴重な機会でした
まとめと今後の展望
以上、出社/在宅環境を交えたリモートエンジニア読書会のご紹介でした。
ビデオ通話、オンラインホワイトボード、録画アーカイブの活用により、リモート環境下でも高いクオリティの読書会が行えています。
まだまだ活動を立ち上げて日が浅いため、これからも継続して社内の技術コミュニティを盛り上げて行きたいなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
*1:https://www.kadokawa.co.jp/product/301806000678/
*2:https://workspace.google.co.jp/intl/ja/products/meet/
Google 製のビデオ会議アプリケーションです。録画機能もあります。
*3:https://workspace.google.co.jp/intl/ja/products/jamboard/
Google 製のオンラインホワイトボードアプリケーションです。
複数人がテキスト、付箋、手書きなどをリアルタイム編集することができます。