こんにちは、エンジニアの岡村です。
2025年9月、Tencentからご招待いただき、Tencent Global Digital Ecosystem Summit 2025に参加してきました。このイベントは、Tencentの最新技術や製品、ソリューションが包括的に紹介される年次戦略イベントで、今年で6回目の開催を迎えました。 コロプラからは、CIOの菅井と私の2名で参加。私にとっては初海外・初出張という貴重な経験となりました。深圳という都市の魅力、華強北での熱烈なセールス体験、そしてAIコンパニオンの実装事例など、3日間で得られた濃密な体験についてご紹介します。
Tencent Global Digital Ecosystem Summit とは
Tencent Global Digital Ecosystem Summitは、中国・深圳に本社を置くTencentが主催する年次戦略イベントです。AIやクラウドコンピューティングを中心とした最新技術の動向や、金融、ゲーム、製造、医療など様々な業界のデジタル変革について、世界中の企業や専門家が集まって議論する国際的なイベントです。Tencentは「Baidu, Alibaba, Tencent」の頭文字から成る「BAT」の一角を担う世界的なIT・ネットサービス企業で、WeChatやTencent Cloudなどのサービスで知られています。
会場である深圳(Shenzhen)は、中国の経済特区として発展し、現在では世界有数のイノベーション都市として知られています。非常にキャッシュレス化が進んでおり、AI音声アシスタントやスマートシティシステムなど高度なデジタル技術が人々の生活に浸透しています。最新のテクノロジーが日常的に活用されている様子を目にでき、デジタル変革の最前線を体験できました。

1日目:Tencent Cloud International Gala Dinner
イベント初日は、Tencent Cloud International Gala Dinnerからスタートしました。Tencent Cloud の導入を検討もしくは活用している国内の企業の方々との交流ができました。
中にはゲーム業界の方々もおり、「日本ゲーム業界で一致団結してグローバルに戦っていきたいよね」という熱い話を聞く機会がありました。 組織や業界全体など大きな視点での議論に参加する機会があり、自分の知識や経験の幅を広げる必要性を感じました。 異業種の方々との会話では、Tencent Cloudの導入事例など、具体的な質問をすることでさらに学びを深められる機会でした。
プログラムの中にはTencent Cloudの活用を特に推進した企業への表彰式がありました。数々の日本企業も表彰されており、日本でこれほどTencent Cloudが活用されているのは意外でした。導入時には丁寧なサポートがあるとお聞きしたので、それが要因の一つかもしれません。

2日目:AIワークショップとメインイベント
2日目は、AIワークショップから始まりました。特に印象的だったのは、「Game for Peace (PUBGの中国版) 」というゲームにAIコンパニオンを実装した事例についてでした。
AIコンパニオンとは一緒に仲間として遊んでくれたり、アドバイスをしてくれる存在のことです。マイクを使ったユーザーがより楽しんでゲームをプレイしている傾向がある中、使ったことのないユーザー向けにAIコンパニオンという選択肢を増やしたとのことでした。実際にリリース後、マイクの継続的な使用率が向上し、ユーザーからのポジティブな評判も多いようです。
AIコンパニオンの技術的な実装についてもお聞きしました。記憶領域をいくつか(期間毎など)に分けて管理することで、より効率的にコンテキストを扱える仕組みになっています。
AIコンパニオンと違和感のないコミュニケーションを実装する際には、ユーザーの入力の解釈、コンパニオンを操作するコマンドの理解、ゲームオブジェクトの理解、発話内容の決定、ゲームのフィールドに合うような音声の合成など、さまざまな工程が存在します。これらは単一の万能モデルではなく、音声処理、自然言語理解、環境認識、戦術判断といった各機能に特化した複数のモデルが連携することで実現しているとのことでした。
また、絶対に間違えてはいけない情報(イベントの報酬内容など)は決定論的なロジックにフォワードさせているというのも興味深い点でした。RAGの構築方法も重要で、キャラ設定だけで(中国語で)小説がかけるくらいの量があるらしいです!
Tencent Global Digital Ecosystem Summit で見てきたもの
メインイベントでは、Tencent Cloudを用いた各種ソリューションの展示と公演が行われました。展示会場を2つ貸切して開催されており、カンファレンスも盛況でした(中国語での進行だったので理解はできませんでしたが、会場の熱気は十分に感じることができました)。
特に印象的だった展示の一つが、マクドナルドとの連携事例でした。カーナビにAIAgentを組み込んで音声でモバイルオーダー、決済、目的地設定ができるシステムで、実際にデモンストレーションを見ることができました。
また、Tencent RTCを用いたロボット操作の展示もありました。クレーンゲームを遠隔操作するデモで、リクエストが処理されて戻ってくるまでで合計300msという高速なレスポンス速度を実感できました。
車とドローンの展示も印象的で、中国の車はネットカフェのような状態になっていました。冷蔵庫、カラオケ、高級な皮が貼ってあるシートなど、もう安さでは売れないからラグジュアリーさで差別化を図っているという話を聞き、中国市場の変化を感じることができました。

華強北(Huaqiangbei)見学
メインイベントの合間には、深圳の華強北地区を訪れました。華強北は「中国電子第一街」として知られる世界最大規模の電子部品市場です。
あらゆる種類の電子部品やガジェット、スマートフォン部品、ドローン、AIチップなどが並んでいました。迅速かつ低コストなサプライチェーンが特徴で、試作品のアイデアから完成品までをわずか数日で実現できるとのことです。
有名ブランドの模倣品(山寨(サンザイ)と呼ぶらしい)もたくさん安く販売されていましたが、見た目や機能は一見ほぼ変わらないクオリティに見えました。また、値切り交渉が活発に行われる雑多な雰囲気で、秋葉原や中野のカオスな部分を濃縮したような場所でした。「このAIマウスがすごいから買って!」CIOの菅井が熱烈なセールスを受ける様子も見ることができ、現地の活気を肌で感じました。

3日目:Tencent本社見学
最終日は、Tencentの本社を見学しました。一つの企業でこれほど巨大なビルを建てていることだけでも驚きでしたが、さらに「ペンギン島」というTencentの本社を中心に据えた人工島を建設予定だという話を聞いたときは、その規模感に畏怖の念を覚えました。
本社内では、教育、交通、通信、医療、決済、データセンター、建設、オートメーション、エンタメなど数々の事業領域への貢献を展示していました。中国国内のデジタル産業のほとんどに関わっているような勢いで、その影響力の大きさを実感しました。
Tencentの企業文化や技術開発の取り組みについて詳しく説明を受け、大規模な技術組織がどのようにイノベーションを生み出しているかを学びました。

学びと今後の展望
今回の参加を通じて、多くの学びと気づきを得ることができました。
今回の参加で得た知見を、コロプラの各事業に活かしていきたいと考えています。特にAIコンパニオンの実装事例は、今後のゲーム開発において非常に参考になるものでした。単一のLLMのみを用いるのではなく、複数モデルを併用するアプローチや記憶領域の工夫など、実用的かつ合理的で、誰もが楽しめるAI実装のヒントを今後の開発に活かしていきたいと思います。
また、国内の技術動向はもちろん、グローバルな視点での技術戦略についても継続的に学習を深めていきたいと思います。今後もこのような国際的なイベントに積極的に参加し、世界の技術動向を把握することで、コロプラの技術力向上に貢献していきたいと考えています。
おわりに
Tencent Global Digital Ecosystem Summit 2025への参加は、私にとって非常に貴重な経験となりました。初海外・初出張という個人的な体験も含めて、多くの学びと気づきを得ることができました。
華強北での熱烈なセールス体験、AIコンパニオンの実装詳細、そして深圳の活気ある街並みなど、すべてが新鮮で刺激的な体験でした。
コロプラでは、最新のテクノロジーと独創的なアイデアで新しい体験を追求し、人々の日常をより楽しく、より素晴らしくしていくことを目指しています。今回の経験で得た知見を活かし、今後もこの目標に向けて取り組んでいきたいと思います。
最後に、このような貴重な機会を提供していただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

ColoplTechについて
コロプラでは、勉強会やブログを通じてエンジニアの方々に役立つ技術や取り組みを幅広く発信していきます。
connpass および X で情報発信していますので、是非メンバー登録とフォローをよろしくお願いいたします。
また、コロプラではゲームや基盤開発のバックエンド・インフラエンジニアを積極採用中です!
興味を持っていただいた方はぜひお気軽にご連絡ください。