こんにちは、バックエンドエンジニアの山田 (@yamadashy) です。
4/9(水)から4/11(金)にかけて開催されたGoogle Cloud Next '25に参加してきました。
Google Cloud Nextは、Google Cloudに関する最新情報や今後の展望を共有する年次イベントで、今年もラスベガスのMandalay Bay Convention Centerで開催されました。
コロプラからは、薮、駒崎、そして私の3名が参加。昨年に続いて2年目の参加となりました。今年のカンファレンスでは、生成AIを中心とした多くの発表があり、その中から特に印象に残った内容について詳しくご紹介させていただきます。
なお、昨年の参加レポートはこちらで詳しく紹介しています。
準備
約1ヶ月前には公式サイトのSession Libraryが公開されます。 予約が必要なセッションはすぐに埋まるので、興味のあるものをなるはやで予約することをおすすめします。
セッションの種類は以下の通りです。
- Keynote(基調講演)
- Breakout Session(技術解説や事例紹介の講演)
- Hands-on Lab(実際に手を動かすワークショップ)
- Developer Meetup(開発者同士の交流会)
- Roundtable(少人数のディスカッション形式)
また、現地参加の場合は以下のような準備もしておくと良いと思います。
- Roundtableや日本向けのイベントなどは名刺交換なども行うので、十分な枚数の名刺を用意しておく
- 公式アプリを活用すると、セッション情報や会場マップ、最新のお知らせを確認できて便利
- イベント中はセッション以外にも Expo など他の展示もあることを念頭に置いてスケジュールを決める
渡航・スケジュール
海外出張の準備は、昨年の経験を活かして比較的スムーズに進めることができました。ラスベガス行きのフライトは乗り継ぎを含む長時間の旅でしたが、機内では映画を観たりしてリラックスして過ごしました。
今回の全体的な出張スケジュールは以下の通りです。
| 日付 | 時刻 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 4/8(火) | 14:27 | Las Vegas | ハリー・リード国際空港到着 |
| 〃 | 18:30 | Mandalay Bay | Japan Welcome Reception |
| 4/9(水) | 終日 | Mandalay Bay | Google Cloud Next '25 |
| 〃 | 19:00 | Bonito Michoacan Mexican Restaurant | GME Dinner |
| 4/10(木) | 終日 | Mandalay Bay | Google Cloud Next '25 |
| 〃 | 19:00 | アレジアント・スタジアム | Next at Night |
| 4/11(金) | 終日 | Mandalay Bay | Google Cloud Next '25 |
| 〃 | 19:00 | Mandalay Bay | Japan Session & Reception |
| 4/12(土) | 08:00 | Las Vegas | ハリー・リード国際空港発 |
イベント前日の4/8(火)にラスベガスに到着。長時間のフライトで疲れは隠せませんでしたが、到着後すぐにJapan Welcome Receptionに参加しました。 このイベントには日本からエンジニアだけでなく、営業やマーケティングなど様々な分野・業種の方々が集まっており、普段は接点の少ない方々との交流ができました。エンジニアとも現在話題のGemini 2.5 Proを初め、Cline, Cursor などのコーディングエージェントの話もでき、とても刺激的な時間となりました。

今回の滞在先は Horseshoe Las Vegas でした。会場までは車で10~15分ほどのホテルです。ホテルのロビーには定番のカジノが広がり、エレベータホールからは話題のスフィアも見ることができました。
Google Cloud Next '25 in Las Vegas
今年は世界中から30,000名以上の参加者が集まり、日本からも850名以上が参加しました。300以上のセッション、ハンズオンなどが提供され、展示エリアでは多くのパートナー企業がブースを出展し、最新のソリューションやサービスを紹介していました。

Google Cloud Next 2025 をまとめた記事(英語)が公式で公開されているので、興味のある方はぜひご覧ください。
Opening Keynote
Opening Keynote: The new way to cloud
カンファレンス初日の朝、Mandalay Bay のメインホールで基調講演が開催されました。
我々は1時間前には会場に到着していましたが、その時点ですでに多くの席が埋まっておりました。次回参加される方は早めの行動をおすすめします。

講演には Google Cloud CEO のトーマス・キュリアン氏と、Google および Alphabet CEO のスンダー・ピチャイ氏が登壇。生でスンダー・ピチャイ氏のスピーチを聞けたのは、オフライン参加ならではの貴重な体験でした。
今回のキーノートでは、やはり生成AI関連の話題が中心でした。 エンジニアとして興味深かったのは、マルチエージェントシステム構築を支援する「Agent Development Kit(ADK)」や、エージェント間の通信を可能にする「Agent2Agent Protocol(A2A)」の紹介です。A2A は SNS でも話題になっており、 MCP(Model Context Protocol)と比較されていましたが、A2A はエージェント間の協調動作に特化しており用途や思想が異なるようですね。
講演中には製品の実際のユースケースを用いたデモも多数紹介されました。
たとえば、Vertex AI の 「Vertex Media Studio」 を使ってテキストから高品質な動画を生成する「Veo 2」や、テキストから音楽を生成できる「Lyria」のデモは、AI の実用性と創造性の可能性を強く感じさせるものでした。
キーノートのアーカイブは以下でご覧いただけます。
セッション
Cloud Next では、Google Cloud の製品/サービスの発表の他にも、Google のパートナー企業などが自社のソリューションを紹介するセッションも多数開催されていました。
そのなかでも現地のメンバーが気になったセッションをピックアップしてご紹介します。
What's next for Google Cloud databases in the AI era
Google CloudのデータベースがAI時代にどう進化しているかについて紹介がありました。
特に印象的だったのは、データベースに対する自然言語インターフェースの進化です。BigQueryやSpannerで自然言語クエリが可能になり、例えば「過去30日間の売上トップ10の商品を教えて」のような質問を直接投げかけることができるようになりました。
AlloyDBでは、AIクエリエンジンが導入され、SQL内に自然言語表現を組み込めるようになったほか、ベクトル検索も大幅に最適化されています。標準のPostgresと比較して最大10倍の高速化が実現し、テキストだけでなく画像や動画も含めたマルチモーダル検索が可能になったとのことです。
SQLに精通していないユーザーでもデータにアクセスしやすくなりそうなのは大きな変化だと感じました。 特に自然言語でのクエリ機能は、データ分析の敷居を下げ、より多くの人がデータドリブンな意思決定を行える可能性を秘めていますね。一方で、負荷やコストが読めないところは慎重になる必要はありそうです。
Accelerate your code reviews with Gemini Code Assist in GitHub
GitHub上でGemini Code Assistによるコードレビューの自動化が紹介されました。
GitHubマーケットプレイスから導入したGeminiは、プルリクエスト作成時に自動的にレビュアーとして加わり、変更内容の要約・改善提案・マージ準備状況評価を短時間で提供します。/geminiコマンドで特定コードの質問も可能で、.gemini/styleguide.mdファイルで企業独自の規約に合わせたカスタマイズができます。
導入事例では、レビューサイクル短縮や早期バグ発見など顕著な効果が報告され、90%の開発者が生産性向上を実感したとのことです。デモでは実際のプルリクエストでGeminiが行うレビューやアドバイスが示されました。
CodeRabbitやGitHub Copilotなど他のツールとの比較において、レビューの精度や使い心地が気になるところですね。
Build AI agents on Cloud Run
Cloud Run を利用してAIエージェントを構築・実行する方法が紹介されました。
LangChainの共同創設者であるHarrison氏がLangGraphフレームワークについて説明した後、Cloud Runがエージェント実行に最適な理由として、自動スケーリング、使用時のみの課金体系、高い信頼性、ストリーミングのネイティブサポートなどが紹介されました。
最も印象的だったのは、Code Rabbitの事例です。このサービスは、GitHubなどのプラットフォーム上でAIによるコードレビューを自動化しています。特に興味深かったのは、AIがリポジトリをクローンし、影響範囲を把握するためにrip-grepやgrep検索を実行するなど、人間のような探索方法でコードを理解していく点です。アーキテクチャ図や実際のインスタンス数なども共有されており、コードレビューアシスタントの裏側を垣間見れて良いセッションでした。
Maximize the availability and performance of your Cloud SQL workloads
Cloud SQLのEnterprise Editionについて紹介されたセッションでした。
GoogleのカスタムArmベースのプロセッサ(プレビュー、6:14〜)を利用することで、N2に比べて48%ものパフォーマンス向上が見込めるとのことです。
また、「optimize write」(9:57〜)機能についても解説があり、2h 以上にわたるwriteスループットの向上や、98%以下のwriteレイテンシーの実現が強調されていました。
さらに、「Managed Connection pooling」(12:52〜)の紹介もあり、スループットが5倍、レイテンシーも85%改善されるなど、接続管理の効率化による大幅なパフォーマンス向上が示されていました。
Solve real-time AI challenges: Bigtable and BigQuery in Spotify's music recommendation engine
Spotifyの音楽レコメンデーションシステム(8:35〜)では、レイテンシーと新鮮さのトレードオフという課題に直面しています。 このセッションでは、Google Cloud Storage, Bigtable, Dataflow, BigQueryなどのGoogle Cloudのデータ分析基盤を活用して、この課題をどのように解決しているかについて、具体的なケーススタディとして解説されました。
Go developers meetup
Go言語ユーザーが集まり、どのようなきっかけでGo言語を使い始めたのか(Kubernetesがきっかけという方が多かったです)などをグループでディスカッションしました。技術的な新しい学びは多くありませんでしたが、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者と、Go言語歴や経験について気軽に語り合うことができ、とても楽しい時間となりました。
共通のトピックがあることで、初対面の方とも自然にコミュニケーションが生まれるのが meetup の魅力です。他の開発者と交流したい方には、meetup はぜひおすすめしたいセッションです。
Transform cloud operations and management with generative AI
GoogleCloudコンソールの至るところにAIアシスタンス機能が実装されたことを紹介するセッションでした。 ローコードでインフラ構築ができるApplication Design Center、チャットサポートのCloud Assist、コスト最適化をサポートするCloud Hub、アプリケーションのメトリクスやログを横断的に見ることができるApplication Monitoringなどが紹介されました。
GoogleCloudのドキュメントを調べなくても答えてくれるCloud Assistはとても便利にいますぐでも使えそうです。Application Desing Centerは使ってみないと実用できるかはまだわからなさそうでした。Application MonitoringはCloud Traceと統合されて、Google Cloud上にシグナルを流しとけばAIパワーでいい感じに問題特定できるようになったりすると、Observability関係でアプリケーション実装者が気にすることが減り、とても便利になりそうな未来が見えました。
What's new with Memorystore for Valkey
2025/4/2にGAとなったMemoryStore for Valkeyのセッションです。 Valkey Recommended for all new workloadsと言っていたので、もう使うしかありません。 Valkey8.0で7.2に比べて並列処理性能が向上した部分などについても解説していました。
MLBのリアルタイムstatsデータを配信するシステム周辺のValkeyとMemoryStoreの使い方についても聞くことができました。ほぼリードオンリーのトラフィックとはいえ膨大なデータがどのくらい発生してどのように捌いているのか、生々しいデータが聞けて興味深かったです。
ラウンドテーブル
カンファレンス期間中、Google Cloud のスペシャリストと直接対話できるラウンドテーブルに参加しました。少人数制の対話形式で行われたため、普段の技術セッションでは聞けないような具体的な質問もでき、非常に有意義な時間となりました。
Cloud Next 展示エリア
展示エリアでは、Googleのパートナーやソリューションプロバイダーが多数出展していました。


特に印象的だったのは以下のブースです。
Anthropic ブース
Anthropicのブースでは、ClaudeやSDKのハンズオンセッションが実施されていました。残念ながら時間の制約で直接の対話は叶いませんでしたが、日頃からClaudeを活用している身として、開発チームの方々を直接拝見できたことは貴重な経験でした。また、Anthropicのブランドロゴ入りペンを記念品としていただき、カンファレンスの思い出の品として大切にしています。

Datadog ブース
Datadogのブースでは、コロプラで日常的に活用しているDatadogについて、エンジニアの方々と気軽に情報交換をさせていただきました。技術的な詳細まで踏み込むことは叶いませんでしたが、Datadogのエンジニアチームの雰囲気を直接感じられる貴重な機会となりました。また、Datadogのブランドロゴ入りソックスを記念品としていただきました。


コロプラはDatadogに関する記事をいくつか出しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
Redis ブース
3日目に立ち寄ったRedisブースではルーレットを連続で目押ししてうまく全部止められたら景品がもらえました。 私はRedisカーをもらいました。

Google Cloud認定資格ラウンジ
以前、Google Cloud主催の「E.G.G. Japan」というプログラムで、Professional Cloud Developer認定資格を取得しており、認定資格保持者専用のラウンジに入ることができました。
内部は空港のラウンジのような空間で、ソファが配置されており、専用のお菓子やコーヒーを楽しみながらゆったり休憩できました。また、認定資格保持者限定のバッジもいただけました。


「E.G.G. Japan」プログラムの詳細や参加体験については、以下の記事で詳しく紹介しています。
Cloud Next その他イベント
Next at Night
カンファレンスの2日目には、Allegiant Stadium で開催された Next at Night に参加しました。 開演は19:00からで、ラスベガス出身の The Killers をヘッドライナーに、グラミー賞受賞者 Wyclef Jean と新進気鋭のシンガーソングライター Tate Renner が特別出演。技術カンファレンスの参加者限定のコンサートで、リフレッシュするのに最適なイベントでした。
https://cloud.withgoogle.com/next/25?session-details=NXN-001
日本語セッションと懇親会
カンファレンス最終日の夕方には、日本人参加者向けに日本語でのおさらいセッションが開催されました。主要な発表内容を日本語で解説してくれるため、英語のセッションで聞き逃した部分を補完することができました。
このセッションで話された内容はこちらのページから資料を確認できます。
https://cloud.google.com/resources/content/intl/ja-jp/nextlv25-jp-recap?hl=ja
セッション後には日本人参加者による懇親会も開催され、普段関わることのない企業の方々とも情報交換できたのは非常に貴重な経験でした。
エンタメ体験
コロプラはエンターテインメントを大切にする会社です。カンファレンス以外の時間もラスベガスのエンターテインメントを存分に楽しみました。
シルクドソレイユ「カー」
世界的に有名なシルク・ドゥ・ソレイユの「カー」を観賞しました。このショーは、垂直に動く巨大なステージを特徴とし、武術とアクロバティックなパフォーマンスが融合した圧巻のエンターテインメントです。
少し印象的だったのは、開演前のパフォーマンスで、おそらく準備運動の一貫かと思われますが、観客の期待感を高める良いアイデアだなと感じました。


スフィア
ラスベガスの新しいランドマークであるスフィアを訪れました。
Google Cloud Next 25の前日には特別な発表会が開催され、1939年公開の名作映画『オズの魔法使(The Wizard of Oz)』をスフィアの16Kスクリーンで上映するプロジェクトが発表されていました。
今回は上映を見れませんでしたが、Keynotesでも紹介されていたこのプロジェクトは、Google Cloudと生成AIを活用して、オリジナルの精神を尊重しつつ前例のない没入型体験を実現していると話されており、来年も参加できればぜひ見に行きたいですね。

HyperX Arena Las Vegas
eスポーツ専用アリーナであるHyperX Arena Las Vegasも訪問しました。プロゲーマーの試合の実況が本格的に行われており、ゲーム会社の社員として非常に興味深い場所でした。

おわりに
Google Cloud Next '25は、最新技術の動向を知るだけでなく、世界中の様々な職種の方々と交流できる、非常に刺激的で学びの多いイベントでした。生成AIやクラウドインフラの進化を肌で感じ、日々の業務や今後のプロジェクトに活かせるヒントがたくさん得られたのは大きな収穫です。
また、現地のブース展示や他社の方々との会話を通じて、ドキュメントや動画だけでは得られないリアルな気づきや、新たな視点にも多く出会えました。こうした偶発的な出会いや体験こそが、オフライン参加の醍醐味だと改めて感じました。
この記事が、Google Cloud Nextへの参加を検討されている方や、クラウド技術に関心をお持ちの方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
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